『ピアノとアレクサンダー・テクニーク』ワークショップ in 横浜 アオバ楽器研修会 第1弾 2024 10/18, 2025 1/26, 3/22
ピアノ演奏と指導に活かすアレクサンダー・テクニーク 緊張を取り除き、内なる可能性を引き出す …
福士恭子 ピアノ&アレクサンダー・テクニーク
ピアノ演奏と指導に活かすアレクサンダー・テクニーク 緊張を取り除き、内なる可能性を引き出す …
「抑制 Inhibition」について
アレクサンダー・テクニークで使われる「抑制」”Inhibition”は、外から、または自分の内部に起こる刺激に対して起こる、無意識の反応に気づき、動きそのものを一旦やめること。
「抑制」というと、少し強い響きがするけれど、習慣によって無意識に起こってしまうことへストップをかける、待つ、ということです。
これまでと違う使い方は、自分にとってなじみがなく、不自然に感じて、元に戻ってしまいそうになりますが、そこに”NO”を言い、無理のない使い方になるように、新しい方向性を与えていきます。
「抑制」は一度ストップすればよいというものではなく、常に考え続ける必要があります。まずは自分自身が習慣的にどのような動きを行っているか、気づくこと。そのために時間を取るのです。
アレクサンダー・テクニークは、施術ではなく、教育と言われますが、自分で自分を再教育していくプロセスがとても重要になります。
どこか痛みが生じているときは、無理な使い方がゆがみとなって現れているのですが、痛みがある箇所そのものだけではなく、全体のバランスから生じています。例えば「肘が痛い」ときも、肘そのものではなく、腕、背中、そして全体の使い方が原因であり、部分だけを治療しても、他の部分に影響が出てくる可能性があります。
今、どのようにピアノに向き合い、鍵盤の上に腕を下ろそうとしていますか。すぐに音にせずに、どのような音が求められるか考えてから、実際に音にしましょう。
ストップといっても、固めることではなく、動きの中で考えられるようになります。楽器の前にいるときだけではなく、普段から自分の習慣的な動きに目を向けてみましょう。
「立ち止まる」
日常はさまざまたくさんのことに溢れていて、忙しく過ぎていきます。
気がつくと「これもしなくちゃ」「あ、忘れてた、急いでやらなきゃ」とつぶやいていませんか?
その言葉が口をついて出てきたら、一度立ち止まってみましょう。
そして前回までお話しした「首・頭・背中」をまず考えてみましょう。
考えるだけ?と思うかもしれませんが、そうすると力尽くでやろうとしていたことに気づき、つながりを考えることで息も通りやすく、呼吸が楽になります。まわり道と思うかもしれませんが、仕事の質にも変化を及ぼします。
演奏の途中で自分にとって苦手なところに差し掛かかり「次、間違いそう」と思うと、それは無意識に、いつものやり方へ自分を誘導しているのかもしれません。
普段の練習でも、がむしゃらに同じやり方を繰り返す前に、なぜ弾きにくいのか、指、手首、腕などの問題か、フレーズの捉え方か、具体的に原因を探り出し、その上で習慣化している弾き方を見つめてみましょう。
「弾く前に」
ピアノを弾くときに使うところはどこでしょう?
と考えると、おそらく指、手首、腕、肩、と身体の中心へ向かっていきます。
もう少し考えを広げていきましょう。鎖骨、肩甲骨、そして考えを下にめぐらすと、背骨を通って、座骨、骨盤、股関節、脚、膝、足の裏、足の指。上にめぐらすと、首、頭と全体につながります。
実は、ピアノを「弾く」ときに考えたいことは、頭の先にも空間があり、足の裏が接している地面に支えられている、その全体のつながりです。
背中を通して、上と下の力が拮抗しあい、いいバランスをとり、ゆったりと背中が広く長く拡がっているとき、身体全体が安定していて、どこも固めない状態でいられるのです。
「弾く」ことを考えるだけで、習慣的にどこかの筋肉が無意識に固まり、動くはずの部分が動きにくい状態になっているかもしれません。
自分の重さが椅子に預けられて、首が自由に、頭がそのうえに押し付けられずに、ふわりと気持ちよく乗っています。脚の重さも足を通して、床に預けられています。
まず始めに、ピアノの前に座った状態で、自分の頭の上方と足の下までのつながり、そしてその周りの空間も一緒に考えてみましょう。
ピアノ演奏と指導に活かすアレクサンダー・テクニーク 緊張を取り除き、内なる可能性を引き出す …