ピアノとアレクサンダー・テクニーク ⑦
「抑制 Inhibition」について アレクサンダー・テクニークで使われる「抑制」Inh …
福士恭子 ピアノ&アレクサンダー・テクニーク
「感覚とは?」
テクニークの創始者F.M.アレクサンダーは、俳優でした。自身のシェイクスピア朗読劇で声枯れが起こる原因を、自分の身体の使い方に原因があるとし、頭を後ろに引き下げて、胸や背中の筋肉を緊張させてしまっていたことに気づいたのです。
首・頭・背中の良い関係、部分ではなく全体のコーディネーションが大切と考え、次の言葉を言い続けました。
「首は自由で、頭は前へ上へ、背中は長く広く」
LET THE NECK BE FREE,
TO LET THE HEAD GO FORWARD AND UP,
TO LET THE BACK LENGTHEN AND WIDEN.
ところがなかなか思うようになりません。
新しいやり方を唱え続けても、実際には今までの習慣と同じことを繰り返していたのです。
なんとなくやっているつもり、という感覚が当てにならない!と気づいたことが、アレクサンダーの次の発見に繋がっていきます。
例えば、肩幅に脚を広げたつもりでも狭かったり、肘を肩の高さまで上げても低かったり、実際に起こっていることと差があるかもしれません。
他にも、正しいと思って出した音程に生じる違いもあります。
感覚、感性など、たくさんの感情の言葉がありますが、人によって「感じ方」はさまざまです。
感情を込めて、表情豊かにと言われても、実際にどのような感情なのかよくわからないことも。
また、感情を表現しようとすると、どこか力が入ったり、息を止めたり、無理な息遣いで、不自然になっているかもしれません。
まず自分自身の首頭背中のコーディネーションを考え、すぐに反応せずに、少し待ってみましょう。
作曲家の意図が伝わるフレーズの流れや感情が自ずと生まれてくるよう、演奏する側にある”つまり、たまり”を排除すると、フレーズが本当に求めているものが聞こえてくるはずです。
次回は習慣についてお話します。