ピアノとアレクサンダー・テクニーク ⑦
「抑制 Inhibition」について
アレクサンダー・テクニークで使われる「抑制」Inhibitionは、外から、または自分の内部に起こる刺激に対して起こる、無意識の反応に気づき、動きそのものを一旦やめること。
「抑制」というと、少し強い響きがしますが、習慣によって無意識に起こってしまうことへストップをかける、待つ、と考えてみましょう。
これまでと違う使い方は、自分にとってなじみがなく、不自然に感じて、元に戻ってしまいそうになりますが、そこに”NO”を言い、無理のない使い方になるように、新しい方向性を与えていきます。
「抑制」は一度ストップすればよいというものではなく、常に考え続ける必要があります。まずは自分自身が習慣的にどのような動きを行っているか、気づくこと。そのために時間を取るのです。
アレクサンダー・テクニークは、施術ではなく、教育と言われますが、自分で自分を再教育していくプロセスがとても重要になります。
どこか痛みが生じているときは、無理な使い方がゆがみとなって現れているのですが、痛みがある箇所そのものだけではなく、全体のバランスから生じています。例えば「肘が痛い」ときも、肘そのものではなく、腕、背中、そして全体の使い方が原因であり、部分だけを治療しても、他の部分に影響が出てくる可能性があります。
今、どのようにピアノに向き合い、鍵盤の上に腕を下ろそうとしていますか。すぐに音にせずに、待って!
自分の首、頭、背中のことを考える。どのような音が求められるか考える。それから実際に音にする。
ストップといっても、固めることではなく、動きの中で考えられるようになります。楽器の前にいるときだけではなく、普段から自分の習慣的な動きに目を向けてみましょう。