ピアノとアレクサンダー・テクニーク ⑨

ピアノとアレクサンダー・テクニーク ⑨

「強い背中?」

教師養成コースでは1600時間以上のトレーニングが必要とされていますが、そのさなかにこの言葉に出合いました。

強いという言葉からは、力を入れ、同じ状態を保つような印象がありますが、ここでの強さは、どちらかというと「しっかりした」状態と言えるかもしれません。

これまでもお話してきたように、首がやわらかく、固めずにいられると、頭がぎゅっと押し付けられずに上へ前へ解放されます。すると、背中も広く伸びやかになる。重力は下に向かうけれど、上を考え続けることで、拮抗するバランスが生まれます。

ところで「背中」はどこまででしょうか。

座っているときは、意識を腰で止めずに、座面まで全部背中と捉え、その先も、脚の裏側をたどって、足を置いている地面までの繫がりを考えてみましょう。そして後方だけではなく、前方との力も拮抗していると、考えてみましょう。

すると、ふらふらしていた背中が、前と後ろに支えられて安定します。

背中がしっかりして、腕や脚のような他の部位が、これまで支えるために使っていた筋肉を使わずに、解放され、それぞれが自由になることに気づくでしょう。

ピアノの前に座ったときに、すぐに鍵盤に触れずに、まず自分自身の背中を考えてみましょう。

地面からの支えがあり、頭から足までの繫がりを考えると、背中も伸びやかに広がり、腕も解放されていきます。すぐに動かずに、まず考えてみる。

無意識に固めていたことに気づいたら、それはチャンスです!

もう一度、首・頭・背中の繫がりを考えてみましょう。