ピアノとアレクサンダー・テクニーク⑩

ピアノとアレクサンダー・テクニーク⑩

「拮抗する力」

何気なく座っている自分の様子を、少し観察してみましょう。

もしかすると無意識に背中が落ちて、首が縮まり、頭が後ろへずん、と下がっていませんか?

または、その逆に、頭がずしんと前へ落ちているかも?

座面には座骨が接し、S字型に湾曲した背骨が支え、その上に頭が気持ちよく乗っている状態を考えるだけで、呼吸が楽になります。

背中をピンと張る必要はないけれど、だら~んとゆるんだ状態でもない。

もちろん必要な筋肉量はあります。

橋を支えている橋台、橋脚を考えてみましょう。重力のあるものを支えているのは、拮抗している力が働いているからです。

足が接している地面が支えてくれ、頭のてっぺんの部分とつながっていることや、前と後ろ、左と右と、拮抗しあい、バランスをとっていると考えてみましょう。

演奏するときも同じです。腕を鍵盤に置いたとき、足と地面の関係のように、手と鍵盤も支え合っている。押したり、たたいたりする必要はないのです。

まず鍵盤に手を置いたときの手の重さを感じてみましょう。動きを早くすればfに、やわらかく使えばpと、素直に答えてくれるはずです。

重力は下へ向かいますが、さらに何かを力で加える必要はなく、逆に「上へ」向かうことを考えてみましょう。

すると自然と呼吸も楽になり、音にも広がりがうまれてくるでしょう。