アレクサンダーの発見

F. マセアス・アレクサンダー(1869年オーストラリア、タスマニア-1955年ロンドン)

F.M.アレクサンダー | アレクサンダーテクニークの学校-からだの快適さ、技術の上達、表現力の向上に役立つ方法-東京・横浜・オンライン・地方出張

オーストラリア生まれのアレクサンダーは朗唱家、舞台俳優として、

キャリアが頂点に向かっている途中、異常な喉の痛みに襲われ、医者からうがいと喉を休ませるよう勧められました。

休ませると、しばらくその効果はありましたが、重要なリサイタルを始めた途端にかすれ始め、全プログラム終了前に舞台を降りなければなりませんでした。

医者からは再度、喉を休ませるよう言われましたが、リサイタルのたびにぶり返すため、

「自分の喉でやっている何か、その状態を引き起こす何かが問題だ」と医者に伝えましたが、医者はその考えに賛成したものの、何が問題かは指摘できませんでした。

そこで鏡を使い自己観察を始めることにしました。

喉の筋肉を不適切に使っているために引き起こされた障害では?と仮説を立て、観察を続けると、朗読している時の自分は、頭を後ろへ引っ張り、喉を押しつぶして、喘ぎ声になるようなやり方で口から息を吸っている、という3つのパターンを発見したのです。

のちに普通の話し方でも、同じ傾向がみられることがわかりました。

頭を引き下げるのをやめると、喉を押しつぶしたり、喘ぎ声になることが少なくなったため、頭と首、身体のそのほかの部分との関係が、身体全体に影響することがわかりました。

頭をさらに前へ持ってくると、逆に下へ引っ張り、喉を押しつぶしていると同時に、胸郭を引き上げ、背中が反って、背中を短くしていることに気づきました。 

その発見により、喉を押しつぶす習性が、発声による特定の部分ではなく、胴全体の使い方に左右されること、頭と首の誤った使い方を防ぐだけでは、改善されないこと。

そして、頭が前と上に向かった時の、背中の広がりによって、発声を邪魔することが減りましたが、頭を前へ上へ持っていくだけではなく、胸郭を引き上げ、背中を弓なりにそらさない状態が大切とわかったのです。

さらに、やっていないつもりでも、実際に朗唱では、頭を後ろに引っ張っているとわかり、感覚は当てにならないと気が付いたのです。

これまでの習慣による反応が邪魔をし、望ましい方向づけを持続するのは簡単ではありません。

これを防ぐためには、気が付かない間に、固めたり縮んだりするような余計なことをしないこと。そして古い馴染みのある使い方が正しく、新しいやり方は間違っていると感じるため、刺激に反応せず、「何もしない」ことが、望ましい関係へ導くと発見したのです。

習慣的、本能的な反応をやめて、頭、首、背中の関係を考え、意識的に新しい指示を送り続けることで、全体の関係、繋がりがうまれ、よりよく機能するとアレクサンダーは考えました。

こうしてアレクサンダーは古い習慣による反応を抑制し、新しい使い方で行えるようになり、喉、声のトラブルのみならず、呼吸の問題も解消していきました。