Christmas Dreamy Concert
クリスマスの夢の世界へ 心温まるひととき 歌とピアノのサロンコンサート 前川朋子 ソプラノ …
福士恭子 ピアノ&アレクサンダー・テクニーク
「強い背中?」
教師養成コースでは1600時間以上のトレーニングが必要とされていますが、そのさなかにこの言葉に出合いました。
強いという言葉からは、力を入れ、同じ状態を保つような印象がありますが、ここでの強さは、どちらかというと「しっかりした」状態と言えるかもしれません。
これまでもお話してきたように、首がやわらかく、固めずにいられると、頭がぎゅっと押し付けられずに上へ前へ解放されます。すると、背中も広く伸びやかになる。重力は下に向かうけれど、上を考え続けることで、拮抗するバランスが生まれます。
ところで「背中」はどこまででしょうか。
座っているときは、意識を腰で止めずに、座面まで全部背中と捉え、その先も、脚の裏側をたどって、足を置いている地面までの繫がりを考えてみましょう。そして後方だけではなく、前方との力も拮抗していると、考えてみましょう。
すると、ふらふらしていた背中が、前と後ろに支えられて安定します。
背中がしっかりして、腕や脚のような他の部位が、これまで支えるために使っていた筋肉を使わずに、解放され、それぞれが自由になることに気づくでしょう。
ピアノの前に座ったときに、すぐに鍵盤に触れずに、まず自分自身の背中を考えてみましょう。
地面からの支えがあり、頭から足までの繫がりを考えると、背中も伸びやかに広がり、腕も解放されていきます。すぐに動かずに、まず考えてみる。
無意識に固めていたことに気づいたら、それはチャンスです!
もう一度、首・頭・背中の繫がりを考えてみましょう。
「抑制 Inhibition」について
アレクサンダー・テクニークで使われる「抑制」Inhibitionは、外から、または自分の内部に起こる刺激に対して起こる、無意識の反応に気づき、動きそのものを一旦やめること。
「抑制」というと、少し強い響きがしますが、習慣によって無意識に起こってしまうことへストップをかける、待つ、と考えてみましょう。
これまでと違う使い方は、自分にとってなじみがなく、不自然に感じて、元に戻ってしまいそうになりますが、そこに”NO”を言い、無理のない使い方になるように、新しい方向性を与えていきます。
「抑制」は一度ストップすればよいというものではなく、常に考え続ける必要があります。まずは自分自身が習慣的にどのような動きを行っているか、気づくこと。そのために時間を取るのです。
アレクサンダー・テクニークは、施術ではなく、教育と言われますが、自分で自分を再教育していくプロセスがとても重要になります。
どこか痛みが生じているときは、無理な使い方がゆがみとなって現れているのですが、痛みがある箇所そのものだけではなく、全体のバランスから生じています。例えば「肘が痛い」ときも、肘そのものではなく、腕、背中、そして全体の使い方が原因であり、部分だけを治療しても、他の部分に影響が出てくる可能性があります。
今、どのようにピアノに向き合い、鍵盤の上に腕を下ろそうとしていますか。すぐに音にせずに、待って!
自分の首、頭、背中のことを考える。どのような音が求められるか考える。それから実際に音にする。
ストップといっても、固めることではなく、動きの中で考えられるようになります。楽器の前にいるときだけではなく、普段から自分の習慣的な動きに目を向けてみましょう。
「立ち止まる」
日常はさまざまたくさんのことに溢れていて、忙しく過ぎていきます。
気がつくと「これもしなくちゃ」「あ、忘れてた、急いでやらなきゃ」とつぶやいていませんか?
その言葉が口をついて出てきたら、一度立ち止まってみましょう。
そして前回までお話しした「首・頭・背中」をまず考えてみましょう。
考えるだけ?と思うかもしれませんが、そうすると力尽くでやろうとしていたことに気づき、つながりを考えることで息も通りやすく、呼吸が楽になります。まわり道と思うかもしれませんが、仕事の質にも変化を及ぼします。
演奏の途中で自分にとって苦手なところに差し掛かかり「次、間違いそう」と思うと、それは無意識に、いつものやり方へ自分を誘導しているのかもしれません。
普段の練習でも、がむしゃらに同じやり方を繰り返す前に、なぜ弾きにくいのか、指、手首、腕などの問題か、フレーズの捉え方か、具体的に原因を探り出し、その上で習慣化している弾き方を見つめてみましょう。